2026
9/14

【コラム】「お墓がなくなっても、いなくなるわけじゃない」

墓じまいの日。

祖母は、長い間守ってきた墓石を、ゆっくりと撫でました。

いつも汚れを拭いていた場所。花を供えていた場所。何度も祖父に話しかけてきた場所。

一つひとつを確かめるように手を添え、そっと言いました。

「おじいちゃん、長い間ありがとうね」

そして手を合わせ、しばらく目を閉じていました。

Sくんも、その隣で静かに手を合わせました。

帰り道、Sくんが祖母に聞きました。

「ばあちゃん、寂しくない?」

祖母は少し考えてから答えました。

「寂しいよ。ずっと通ってきた場所だからね」

少し間を置いて、祖母は続けました。

「でもね、お墓がなくなったって、おじいちゃんがいなくなるわけじゃないから」

Sくんが顔を向けると、祖母は穏やかに笑っていました。

「これからも、おじいちゃんの話をしようね。あんなことがあったね、こんなことを言っていたねって。それも、きっと喜んでくれるよ」

その言葉を聞いて、Sくんは子どもの頃のお墓参りを思い出しました。

祖母と並んで歩いた道。小さな手で運んだ水。供えた花。そして、帰りに食べたアイス。

墓石の形が変わっても、その一つひとつは、今もはっきりと思い出せました。

「そうだね。また、じいちゃんの話を聞かせてよ」

Sくんがそう言うと、祖母はうれしそうにうなずきました。

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