2026
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【コラム】受け継がれるもの

墓じまい — 秋、三世代が考えた家族のこれから

第一話 秋の墓参り

十月に入ったばかりの午後。



空は高く澄み、墓地へ続く坂道には、赤く色づき始めた柿の葉が風に揺れていた。

「今年も、よく来てくれたね」

祖母はそう言いながら、墓石の上に落ちた葉を一枚ずつ拾っていく。

隣では父が黙って水を汲み、娘は少し離れたところから、二人の背中を眺めていた。

このお墓には、祖父と、その前の代から続く家族が眠っている。

祖母にとってここは、長年連れ添った夫に会いに来る大切な場所だった。

線香を供え、静かに手を合わせる祖母の横顔は、いつもと変わらず穏やかに見えた。

けれど、墓地までの坂道を上ってきたせいか、その呼吸は以前より少し荒い。

「おばあちゃん、大丈夫?」

娘が声をかけると、祖母は振り返って笑った。

「大丈夫、大丈夫。まだ来られるよ」

その言葉を聞きながら、父は何も言わなかった。

けれど胸の中には、数年前から消えない小さな心配があった。

自分も六十を過ぎた。

母を連れて、この坂道をあと何回来られるだろう。

そして、その先は誰がこのお墓を守っていくのだろう。

娘は結婚し、今は県外で暮らしている。

父は、娘に墓守の負担を残したくなかった。

けれど、その話を口に出せば、まるで先祖を大切にしていないような気がして、これまで誰にも言えずにいた。

娘もまた、父の表情が少し曇ったことに気づいていた。

幼い頃から何度も訪れたこの場所。

お彼岸には祖母に手を引かれ、墓石に水をかけ、帰り道には栗まんじゅうを買ってもらった。

娘にとっても、このお墓はただ遺骨が納められている場所ではなかった。

三人それぞれに、守りたいものがあった。

ただ、その気持ちはまだ、言葉になっていなかった。



秋風が、三人の間を静かに通り抜けていった。

その数日後。

父は、ずっと胸の中にしまってきた話を、とうとう祖母に切り出すことになる。

つづく


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